(4) 独りの食事作り
[2011/12/26]

 わが家の冷蔵庫の野菜室は、常に満杯である。

 スーパーまでは、ほんの5分なのだけれど、天候や、体調のせいで行けなくなったときのことを考えて、買い込むことにしている。

 戦争中、〈もったいない〉精神を教育されてきたので、それらを無駄にすることはない。

 年齢と共に、私が野菜好きになったためでもある。

 まず、朝食。

 野菜たっぷり。パンはライ麦の入った黒パン系が好きで、6枚切り食パンの半切れ。玉子、チーズ、ヨーグルト、果物、コーヒーなど。 

 野菜はキャベツが主で、赤い人参と緑のピーマンかにらを色どりに。洗って、ざく切りにしたものを、3日分くらい、大きい密閉容器に入れ、冷蔵庫に保存しておく。

 下準備のおかげで、朝は簡単。

 フライパンに油少々、野菜を入れ、玉子をまん中に。ふたをして蒸し焼きにする。

 油は、エキストラバージン・オリーブオイル。天ぷらやカツなど家では作らなくなったので、この1本でコト足りる。これならサラダ用にも使えて便利だ。

 味つけしないで仕上がったものを皿にとり、りんご酢とゴマ少々、醤油をぱらりとかける。

 昼食も夕食も、もちろん手作り。おかずはたくさん食べたいが、年をとって、胃袋が小さくなった。それで主食のご飯は半ぜん。

 

 デパートやスーパーの総菜売場で、1人前のおかずを、よく見かけるようになった。

 小さなケースに、美味しそうに納まっているので、2度ばかり買ったことがある。私には味が濃過ぎた。

 業界も研究しているとみえ、薄味のも、老人向けに売り出されているらしい。

 知人のお母さん(私と同年輩)は、気に入って毎日、届けてもらっておられるという。

 いずれは私もお世話になるかもしれないが……。

 

 以前、孫の1人が、大学院受験で、わが家に滞在したことがある。

 今の若者は、ダサイ弁当持参など嫌うだろうなと承知の上で、「お弁当作ってほしい?」とたずねたら、意外や、返事は「うん」。

 試験から帰宅後の第一声が、「お弁当美味しかったよ」。

 私が張り切って、期間中、弁当作りにはげんだことは言うまでもない。

 またその昔、息子が小学生のとき、よその家でカレーを御馳走になってきたことがあった。「野菜が小さかった」とびっくりして報告する。「大きく切った方が美味しく出来上がるのよ」と反論した記憶がある。

 大まかな調理法で、めんどうがないぶん、私は今なお、料理作りが好きなのかもしれない。

 

 独り暮らしで困るのは、同じおかずが続いて食慾が出ないことである。

 シチューや和風の煮物などは、ちょっぴり作っても美味しくない。

 そういうものを作るときには、はじめ、薄味にしておく。

 酒、みりんはたっぷり。にんにく、しょうがは適宜に。上等の出し昆布を大束で買っているので、和風のものにはもちろんだが、シチューにも入れる。細かく切って入れるので、とろとろにやわらかくなり、いっしょに食べてしまう。味に厚味が出るようだ。

 それを毎回小鍋にとりわけ、ケチャップ、カレー粉、味噌、バター、蜂みつ、りんご酢など、味つけを変えて、新鮮に食べられるよう工夫している。

 60年の台所経験があるから、自然に手が動いて、ピタリと味がきまることがある。

 でも、いちいち計って作るわけではないから、毎回うまくいくわけではない。

 天候やら、食べる人の心理が働くから、それらを踏まえてのごはん作りは奥が深い。

 不出来のあとに上出来があって、人生は楽しいのかもしれない。

 台所に立てるだけで幸せだと思う。その気持をたいせつに、これからも、手抜き料理にいそしみたい。