海の星──イヴォンヌ・ジョルジュを求めて

[ふらんす 2003年11月号]

[中国新聞 7月27日ほか]

[サンデー毎日 8月3日号]

 坂口安吾が絶賛し、コクトーやサティを刺激した天才シャンソン歌手がいた。その名はイヴォンヌ・ジョルジュ。1920年代にはダミアと並び称せされた。たった十数曲の録音を残したのみで、34歳で夭折。このイヴォンヌの生涯と芸術を、現存する数少ない資料でよみがえらせる。

[毎日新聞 7月20日]

 こんなシャンソン歌手がいたとは知らなかった。ベルギー生まれ。新しい文化が花開いた一九二〇年代のパリで活躍。ダミアと並ぶ人気歌手となりエリック・サティ、ジャン・コクトーらに愛された。
 シャンソンといっても甘い恋の歌ではない。市井の人々の哀歓を切々と歌う。代表作に「水夫の唄」「せむし」。病弱のため十数曲の録音を残しただけで一九三〇年、三十代の若さでジェノバにて客死。
 故郷ベルギーでも知る人は少ないという。著者はこの忘れられたシャンソン歌手の生涯を追う。
 調べてゆくと意外な事実も。パリでは早川雪洲と舞台で共演していた。戦前、坂口安吾が彼女に魅了されていた。最後の町ジェノバにまで出かける著者の熱意に敬服。
本の詳細を見る→<ISBN4-88008-301-1